彼は大好きなのに。敷居の高さに不安を感じる毎日

大好きな人がいますが、会社の経営者なのです。彼は二代目でお父様の跡を継いで社長になりました。プロポーズされたときは、まさに天にも昇るような気持ちで、嬉しくてたまらなかったです。無事に婚約し、高価な指輪もプレゼントされました。婚約者を好きな気持ちは変わりません。しかし、今は徐々に敷居の高さを感じています。
 婚約を結ぶときにご自宅へ招かれました。そのときにはまさにお屋敷と呼べるような家に圧倒され、お手洗いを借りるのに迷子になったほどです。ご自宅の広さは私の家の何倍なのか、想像するだけで場違いな自分が恥ずかしくなってきました。おまけに彼は有名大学を出ていますが、私は高卒で今の企業に就職したのです。「身分違い」という言葉がぴったりだと感じました。
 ご両親はずっと笑顔で対応してくれましたが、ごく一般人どころか、学歴もない私を本当はどう見ていたのかわかりかねます。婚約についても、彼が強くアピールをしてくれて、無事に済ませることができましたが、本当にこれでよかったのかと不安になるのです。
 私の両親はあまりも育った環境が違いすぎるという理由で、最初は反対でした。私が粘り強く説得したので、ようやく頷いてくれたのです。嫁げばきっと私が苦労すると心配になったのだと思います。
 今も婚約者は私にとてもやさしくしてくれますし、大好きな人です。デートも素敵な場所をセッティングしてくれるし、私が楽しめるようにさまざまな配慮をしてくれます。しかし、有名ホテルのスウィートルームを、電話一本で簡単に押さえてしまう相手に、強い引け目を感じるようになったのも事実なのです。あまりにも最初から持っているものが違いすぎれば、結婚後の生活で価値観がずれてしまうのではないかと心配になるのです。
 また、結婚後は退職して、相手の家に入る予定なのですが、ご両親と上手にやっていけるのかも正直わかりません。私は教養のある人間ではないし、話しについていけないのではないかと思うのです。社交界というところも、怖くてたまらないし、立ち居振る舞いもびくびくしてしまいそうです。
 ただ好きだというただそれだけの気持ちで、ここまで突っ走ってきてしまいました。婚約指輪もいただいた今、引き返すことはもうできないと思います。せめて少しでも相手のお家で恥をかかないように、礼儀作法の教室と料理教室に通っています。婚約者は無理をする必要はないと笑っていますが、いまひとつ私の抱えている不安を、理解していないようにも見えるのです。一朝一夕で私が変われるものではありませんが、せめて少しでもふさわしい婚約者になるために頑張っていきたいと思います。